「白神山地 田苗代湿原 と 岳岱観察林    2022.07
    (たなしろ しつげん と だけだい かんさつりん)
topへ
「よかったところ」topへ
 白神山地は、屋久島と並んで日本の世界(自然)遺産第一号です。ですが私はこれまで西端にある十二湖を車で訪れたことがあるだけで、ブナの原生林を十分に味わったことはありませんでした。今回訪ねたのは世界遺産の区域ではありませんが、同様の環境を見学することが出来そうなところです。
 解説動画はこちらにありますのでぜひご覧ください。
 白神山地は青森県と秋田県にまたがっています。今回目指す歩行ポイントは秋田県側で、前日夕刻に到着した「白神山地世界遺産センター藤里館」で基礎知識や道路情報を入手します。
 
 センター閉館時刻の後、近くに温泉入浴ができるところがありそうなので、道を少し山側に行くと、なにやら公共施設らしいのですが入浴などは出来そうもない建物がありました。でも看板に「農村環境改善センター(温泉)」とありましたので、おそるおそる中で事務を執っている?方に聞いてみると、入浴可でシャンプーも付いてて300円で、今はお客さんも居なくて空いているということでした。
 私の外出先での評価基準の一つに、すいていることがありますので、価格も安いし高評価です。宿泊も可能な設備があるようです。泉質もとろりとした透明なお湯でゆったりすることができました。
 この他にも450円だけど各種の入浴設備が付いているホテルもあるみたいです。このあたりをゆっくり宿泊目的に来るのも良いかもしれません。
 翌朝の朝食前に、藤琴川に沿ってくねる道を遡ってゆきます。少し前に大雨でも降ったのか、川底の石の色がそのままに見えて薄青緑色に透き通った流れに覆われている渓流が涼やかです。危険が無ければそこでゆっくり遊ぶのも楽しそうです。
 まっすぐ進むと青森の西目屋に出ますが、途中で左へそれて 岳岱自然観察教育林の方へ向かいます。
 観察林の入り口には看板とトイレ棟がありますが、説明施設は歩道の先にあります。(左写真)
 2.5万分の地形図を見ると、ここから田苗代湿原までの道は一段と狭くなるようです。私の車(キャンカー)で通過できるか心配でしたが、路面はずっと舗装されていて、特に困ることもなく湿原入り口の駐車場に到着出来ました。こちらで朝食をいただきます。
 トイレは途中のキャンプ場・観察林入り口・こちらの駐車場と、3か所に整備されていて安心です。ケイタイが圏外なのと熊を気にしなければPキャンにも良さそうな所です。
 説明看板があって、白神山地から八甲田山塊までは保護林を相互に連結して森林生態系の保全を図っているようです。
 冬季間も秋田・青森間で通行可能な道は東の矢立峠(R7)と西の五能線沿いの海岸ルート(R101)しかありません。その間にこの広範囲なブナ林が広がっています。
 その白神山地に2か所しかない湿原の一つが田苗代湿原ということで秘境感が強いのですが、直前まで車道が整備されていることでほんの少しの歩行で到達することが出来ます。
 駐車場から400mで湿原入り口ですが、途中はあまり勾配の無いブナ林を気持ちよく歩いてゆきます。
 小さな沢や駒ヶ岳への分岐を経てほどなく湿原の北端に着きます。木道が整備されていて、右に左にニッコウキスゲを愛でながら進んでゆきます。
 ニッコウキスゲは一日花ということで、茎の先に幾つかあるつぼみが順番に咲いていくのですが、一つのつぼみは一日しか咲くことがありません。なので咲き終わった花はしおれて、翌日以降は別のつぼみが開花するという仕組みになっているようです。この日は仮に10個のつぼみがあるとすると、5・6個の花が咲き終わったところで、最盛期をほんの少し過ぎたところかもしれません。でもだれが栽培したわけでもないのにタダでお花畑を見せてくれるのですからありがたいことです。
 ニッコウキスゲの他にも石楠花やトキソウなどの花も咲いています。午前8時を過ぎるとすれ違う人も何人か出てきて、駐車場に戻るとほぼ満車になっていました。少し下って岳岱自然観察教育林に向かいます。
 往路にも立ち寄った立派なトイレ棟の近くに車を置いて「岳岱自然観察教育林」の散策に入ります。

(この入稿時点で、青森・秋田の日本海側で大雨による被害が甚大となり、西目屋では白神山地に通じる16の登山道全てが通行困難となっているとの報道です。再度利用できる環境が整うことを願っています)
 散策路を少し進んだところに無人の展示解説施設があります。照明電源はソーラーと蓄電池のようです。 
 さほど勾配がきつくなく、尖ってもいないゆるい尾根に沿って概ね八の字状の周回コースを進みます。
 幾つかポイントがあって、こちらはモリアオガエルの池で、この時点でオタマジャクシがうようよいました。餌は足りるのでしょうか? 金魚の餌でも百均から買ってきてあげたいくらいですが、自然のバランスで成り立っているのでしょうから、見るだけで触れずに通過します。
 ぶな林や、巨石や、湧き水を巡って戻ってきましたが、白神山地一番の巨木と言われる「400年ぶな」の案内板はあるものの、巨木の姿はありません。周囲をロープで囲んであって、巨木は横たわった姿でしか見ることが出来ませんでした。
 歩道の入り口にある案内板は、付け替えられる予定のようで、新しい案内板が地面に置かれていましたので、その内容を読んで事情が分かりました。

 以下に解説文章を原文のまま転記します。

白神のシンボル400年ブナ
 400年ブナの倒伏
 令和3年11月4日の通行止めまでは生立を確認していましたが、令和3年度の大雪や強風の影響と思われますが、令和4年3月21日に倒伏しているのが確認されました。
 400年ブナは、平成11年9月の台風により大枝が折損し、その影響もあり折損箇所の腐朽が見られていました。フナの寿命は300年前後と言われており、倒伏した400年ブナは根元から折れたと考えられ、根元の腐朽状態からまさに「倒壊」したものと思われます。寿命を大きく超え天寿を全うした400年ブナは、これからは森のサイクルを学ぶ教材として倒伏したままの状態で保存することとしまし ままの状態で保存することとしました。
(管理者注:下線部は案内板原文のままで重複校正ミス?2022.7時点)

 生立当時の樹形
 太さ 1.45m 幹周り 4.85m 樹高 26


 「400年ブナ」名前の由来
 昭和50年代に枝が落ちたり大きく傾いてしまい危険になったブナ巨木を伐倒し年輪を数えたところ樹齢400年と推定され、当時の400年ブナの姿・形(大きさや高さ)が似ていることから、「400年ブナ」と呼ばれるようになりました。

 白神のシンボル
 400年ブナは、林野庁が選定する「森の巨人たち100選」に選ばれ、秋田県側における白神山地のシンボル的存在となっていました。
 (東北森林管理局で22本が選定され、秋田県では9本が選定。)

 倒伏してもなお白神のシンボルとして、同じ場所で訪れる人を迎えてくれています。

 

青森・秋田の両県にまたがる白神山地を南北に越える県道西目屋二ツ井線をたどります。鶴瓶落峠の秋田側に急峻な岸壁と谷を展望できるところがあります。谷底迄見通すことが出来ない傾斜で、これだけでも観光名所になりそうです。ですが細い道の山奥なので私のような辺鄙な所が好きな人しか行かないかもしれません。

青森県側に降りてゆくと鉱山やダムがありますが、途中ホコリだらけになる未舗装が長く続きます。青森側のビジターセンターで学習しますが、秋田側より規模が大きく映像展示もあって少し長くいてしまいました。
 

 今回の記録をまとめた動画をアップしてありますので是非ご覧ください。(左画像をクリック)

 この次には白神山地のもう一つの湿原がある「田代岳」へも行ってみたいところですが、執筆時点で2022年の大雨の影響で白神山地の道はほとんどが通行止めのようです。地元の皆さんの生活など早い回復を願っています。